モラル 〜Morals〜
投稿日時 2004-8-27 3:11:43 | トピック: コラム
| ずっと昔のことです。私は夢を持っていました。もしも自分が母親になったら子供達にピアノやヴァイオリンを習わせよう。上手になった子供達の演奏を聴けたらどんなに幸せだろうか、山登りもスキーも教えよう、一緒に休日を楽しめたら素敵。学校の勉強だっていやにならずにしっかり勉強してゆく子供に育てよう等々いっぱいありました。
ところが実際に子供を持ってみると、現実は厳しく夢とはなかなか一緒になりませんでした。私の仕事が忙しすぎたためずい分努力したのですが、どれ一つとっても、彼等のために充分時間を作って教えてやる事が出来ませんでした。 その厳しい現実の中で私は考えました。人間が人間の社会の中で生きてゆくとき、何が大切な事だろうか? まず礼儀が守れることだと思いました。挨拶がきちんと出来ることです。「おはようございます」「おやすみなさい」「こんにちは」「さようなら」等々。親切にしていただいた時、何か物を戴いた時の「ありがとうございます」悪い事をした時すぐに「ごめんなさい」「すみません」と言える事です。礼儀は人間社会にとってとても大切なものです。性格の違った人々が集まって暮らしているのです。心なく銘々が好き勝手な事を言っていては世の中うまくいかないでしょう。礼儀がある事によって、人は相手を認め、尊重する事ができます。礼儀は人と人とのクッションになって世の中がうまく動くようになっているのです。
もう一つ、いつも私の口癖だったのが「自分さえよければいいと思っている人は人間のくずよ」「何か戴いた時はまわりの人に分けなさい」「学校の勉強が出来ても偉いことはないの。出来なくても、心のやさしい思いやりのある人になってちょうだい」でした。 そして10年20年と月日が過ぎ、息子が大学生で東京に一人で住んでいた時、つい心配になり「“ありがとう”と“すみません”だけは忘れないでよ」と言うと「あのね、僕ぐらいすぐに“すみません”と言う人ないんですよ! 今はやたらにすみませんと言うと損するんです!」息子の勢いにビックリしながら『あぁ、やっぱり私の教えた事は生きている』と嬉しく思いました。
もう一人の娘の方は、小学校6年生の三学期、一番寒い時(零下10度以下が何日も続きました)に問題が起こりました。毎朝々々目が覚めると「あぁ、また朝体操! 死にそうに寒いのよ。体操服一枚で1時間も外にいなければならないの」とため息をつきます。そのうちにとうとう熱を出してしまいました。一週間も休んだのですが熱はちっとも下がりません。私は学校に行って受け持ちの先生に会い事情を話し、外に出ないで教室にいられるようお願いしました。家に帰って娘に話すと「ママ、私だけじゃないんだよ。友達もみんな死にそう! って言ってるのに何で私だけが教室にいられるの? ママいつも言ってるじゃない。自分さえよければいいっていうのは、人間のくずだって。私だけ教室にいるなんて、だんぜんいやです!」と怒られてしまいました。ここでも教育の成果が表れています。
最近マスコミを騒がせている証券不祥事件を見ていると、モラルのない人達の集まりのように思えてなりません。自分さえ儲かってしまえば他人なんかどうなってもいいという考え方です。どこかのニュースキャスターが「彼らにモラルを求めなければ‥‥」というとゲストの大学の先生が「それは無理ですよ??? 彼らはモラルなんて持っていませんから‥‥」 やっぱりピアノの基本のように、人間のモラルも幼い時に親がしっかり教えなければいけないのですね。【K】 (1991.9.16.掲載)
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