人間が人間であるために

投稿日時 2011-9-18 2:36:44 | トピック: コラム



1月の中頃でした。 家に帰ってテレビをつけるとNHKで『尾崎 豊/魂の記録 〜僕が僕であるために〜』という、音楽ドキュメントをやっていました。

私は今日まで尾崎 豊については、詩を書いて歌う人で若い人達に絶大な人気があったのに、26才である日突然亡くなってしまったということぐらいしか知りませんでした。彼の歌うのを聴いたこともなければ、他の人から話を聞いたこともなく何も知りませんでした。

 本来、歌の番組は好きでないのでいつもならすぐチャンネルを変えてしまうのに、その時は引き込まれるように聴いてしまいました。そして驚きました。彼はただの歌手ではありません! 彼の詩と歌は彼の魂の叫びです。
 
年をとっている私から今の若い人を見ていると、恵まれすぎた環境の中で育っているせいか、ほとんどの若者は何も物を真剣に考えないで、ただ自分勝手な欲望に従って生きていると思っていました。自分さえ良ければ他人のことなどに心を配ることなどしない、又ただただ楽な道を選び苦労をすることなど大嫌い。挙げ句の果てに自分さえ得をするなら人に迷惑をかけても、人を押しのけてでも等々・・・心も魂もどこへ行ってしまったの? という若者が多いと嘆いていました。

 でもこのテレビで尾崎 豊の歌を聴き、ステージで歌うというよりみんなに語りかけ又叫んで精一杯愛情をかけて訴えている歌の内容を聴き、こんなに純粋で美しい魂を持った若者がいたことに感動しました。

本当に驚くべきことは18才で歌い始めて26才で亡くなるまで、この若さで今の世の中の間違いだらけの仕組み、大人達の犯している過ち、どうしてこんなに分かったのでしょう!

彼の心と魂は純粋で繊細で正しい真理を求め、少しのごまかしも妥協も許していません。彼は人間にとって何が大切で何が大切でないかよく分かっていて、すべての人間が正しい人間になる事を望み、それを皆に訴える手段として歌のコンサートで歌い続けたのです。叫び続けたのです。 自分の持っている情熱をすべて傾けてもう絶叫しています。

 私は自分を恥ずかしいと感じました。私達自身あれだけ熱心に世の中が良くなるように情熱を燃やしただろうか、毎日を怠けずに誠実に生きているだろうか・・・NHKのテレビ放送が終わってからもずっと真剣に考え続けました。

人にはそれぞれ性格もあるし仕事も異なるので、誰も彼もが尾崎 豊のように激しく短い歳月行動する事は出来ないのですが、形や方法が違っても私達は自分の利害損得のためでなく世の中が少しでも良くなるよう、情熱を持って生きていかなければいけないのだとつくづく考えさせられました。 まず一人一人がそう思わなければ、人類の美しい未来はないのです。

 尾崎 豊はあまり激しく訴え続けたので26才という若さで普通の人が百年生きる分を使い果たしてしまったのだと思います。短い間でしたが彼の激しく訴えた事は無駄ではなく、それは彼の魂から若い人達の魂に通じ「彼を知って人生観が変わりました」と多くの若者が言っています。

 私もあれ程の事は出来なくても彼に負けないよう、毎日のレッスンを通して子供達に少しでも正しいこと、人間が人間であるためにどうしなければいけないか、命のある限り訴えていきたいと元気を出しています。 【K】(1998.2.3.掲載)




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