楽譜が読めます(3) 「正しい読譜」
投稿日時 2005-12-13 1:42:40 | トピック: コラム
| 前回も書きましたようにピアノという楽器は、多声部を一人で右手と左手を使って弾かなければなりません。それで正しい読譜が大変重要です。人間は手が二つ、指が五本ずつですから、二声から三声四声となると、目で楽譜を見て音符を正しく理解すると同時に、それを正しく音にするには高度のテクニックが必要です。
ここで世の中の人は一つ大変間違った考え方をしている事に気が付いてほしいのです。そしてこれは、読譜だけではありません。すべての事に共通する問題です。
それは「頭で解る」事と「出来る」という事が混線して考えられ「どちらも同じなのだ。頭脳が解った事は当然出来るのだ」と勘違いをしています。ところが頭で物事が解る即ち知識があるという事と、それが実際に体を使って出来るという事は全く違った時限の問題です。
どんなに沢山の知識が頭の中にあっても、それが全部出来る人など、どこをさがしてもいません。その反対に知識がなくても出来る事は沢山あります。子供の時代はほとんど何をやるにも「出来る」方でやっています。
母国語を三才になれば自由に話し、文法的に現在も過去も間違えずに使えるでしょう。しかし子供達は文法の知識など全然持っていません。日本人の大人は英語を勉強して知識は沢山あるのですが、それを全部使う事が出来るかは疑問です。すべての事にこの違いがあてはまります。
読譜も同じです。音楽学校を卒業しているピアノの先生方(世界中の)でも、勉強されたのですから知識は豊富ですが、実際に正しくそれを音にする即ちピアノを弾くという事になるとほとんどの人が正しく弾く事が出来ません。 それともう一つ、大人の間違った常識は「子供の時は幼稚だからいい加減でよい、大人になったら難しい事を習いましょう」です。体で実際に出来る事は大人になってから始めても、もう間に合いません。スポーツの世界をみれば歴然です。母国語もそうです。子供の時がいかに大切かはよく考えれば分かる事です。
読譜で大切な基本は 1.その曲が何拍子かを知り、2拍子なら2拍子に3拍子なら3拍子のリズムにのって弾ける事です。 2.音符の長さ、即ち音価を正しく読みとって間違えない音量で弾けること(たとえば4分音符、8分音符、16分音符の音量を間違えなく表現出来る)。 3.どの部分がメロディーか伴奏か判断してそれぞれ音量をコントロールできる。 4.指使いが注意出来る。 5.表示してあるすべての記号を読みとる能力 等々です。
これが体で正しく弾けるような能力を作るには、読譜を始めた初歩の時から教える人が本当に根気よく手を抜かないで正しく教え、良いテクニックを積み重ねていかなければなりません。
世の中ではスズキメソードの子供は楽譜が読めないと言われています。でもそれは違います。正しいスズキメソードで習った子供は、必ず正しく楽譜を読める人に育っています。私は反対にスズキメソードでない今迄の普通の方法で習った人、前にも言ったように音楽学校を卒業した人達が「正しい読譜」が出来ないと思っています。
音楽の文盲にならないよう、皆さんしっかり正しい読譜を勉強して下さい。【K】(1992.12.18.掲載)
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