自由と努力
投稿日時 2007-10-31 3:05:32 | トピック: コラム
| だい分前、朝日新聞の天声人語で読んだ野球の話です。それはオリックス球団イチロー選手の事でした。
「イチローが小学生の頃、家で飼っていた金魚の水槽の前で魚の動きを見つめたまま、一時間でも二時間でもじっと動かないでいた。彼はその時に落ち着きと集中力、相手の動きを見る目を培ったのだろう」とお父さんが言われたと書かれていました。
なるほど魚は柔らかく水の中で実にすばやく動き回りますから、それを注意深く眺める事で物の動きを感じとる事と、長い時間じっと動かないでそれを見続けた事が集中力を養う練習になったのだなと思いました。 しかし、それよりも次の瞬間私はお父さんの素晴らしさに感動しました。世の中のお父さんお母さん、自分の子供がそういう事をしている時、親として何と言うか想像してみて下さい。
「何をいつまでも、そんなくだらない物見てるんです。さっさと宿題でもしたらどう!」 一番簡単に言ってしまいそうなセリフですね。私だってきっとそう言ってしまいます。普通の親は毎日の生活に追われていて子供のやっている事が10年、15年先に役に立つと考えられる程スケールが大きくなれないでしょう。どうしても目先の事だけ考えてしまいます。
私はいつも考えます。一人一人の人間は生まれた時に何か特長が与えられているような気がします。全部の人がロボットのように同じではありません。
味覚の非常に発達している人は良い料理人になれるでしょう。喋る事がとてもうまい人、一つの事に集中して他の事は何も分からなくなる人、大勢の事に気が配れて人々をまとめられる人、歌を歌わせたら素晴らしい声の人、ヨーイドンで走らせるととても速い人、学校のテストでどんな学科でも100点の取れる人、その他いくらでも色々あります。それをよく分かっていて自分の子供が何に向いているか見極められる親が素晴らしい親なのではないでしょうか。
水槽の前でじっと魚を見つめている自分の子供を、将来にそなえてなすがままにさせておいたイチロー君の親に拍手を送りたいと思います。普通の親は「そんなくだらない事してないで、次の試験で100点取ってきなさい!」と言うのがおちです。子供の自由を奪わないでのびのび育てる、これは素晴らしい事です。
先生方の集まりの時この話をしましたらテレビで聞いたのですが、と話して下さった先生がいます。それはやはりイチロー君のお父さんが彼が小学校の頃、一年364日バッティングセンターへ連れて行ってバッティングの練習をさせたそうです。
スポーツも子供の時代に、体に覚えさせるのはスズキメソードと同じ事です。それとお父さんが自分の一日の仕事を終わってから毎日子供をそこへ連れて行った行為は素晴らしいの一語につきます。皆さん子供達に364日ピアノの練習をさせているでしょうか? 364日通う事で子供は忍耐と努力と続ける事が力になるのだという体験を得るでしょう。
子供には何としても良い計画を立てて実行出来るようにしてくれる大人の助けが必要なのです! そして、それが子供にとって良い環境なのです。
この親の苦心の基礎作りがあってこそ、初めて一人の人間に花が咲きます。良い基礎作りはしない、良い芽は全部摘んでしまう等のひどいことのないよう子供達を育てたいものです。 【K】(1994.10.20.掲載)
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