楽譜が読めます(1)

投稿日時 2005-10-31 22:03:00 | トピック: コラム


 スズキメソードの素晴らしさは最初に幼い子が勉強を始める時、楽譜を読むことではなく音楽を聴いて覚えて弾いてしまうことです。言葉は世界中どこでもこの方法で赤ん坊から覚え喋れるようになっています。スズキメソードが世界中に広まった大切な要因はこの導入の方法が素晴らしかったからです。

 始まりは成功しました。子供が最初に音楽に入っていく最良の方法が分かったのです。さあそうしたら次を考えなければいけません。勿論いろいろな問題があります。音楽の音の作り方、リズムにどうやってのるか、レガートは、スタッカートは、読譜は等々・・・です。その中で今回は読譜について考えてみましょう。

 他の問題即ち良い音、リズム、レガート、スタッカート等々はどの楽器でも同じでしょう。但し、読譜だけはピアニストにとって大変重要な問題だと認識してもらいたいのです。「幼い時はいいかげんにやって、上級生になってから教えても大丈夫」と言う人が大多数のような気がします。これが大きな間違いのもとです。上級生になってから教えると知識として覚えますが体にはつかないので手遅れなのです。

 ピアノという楽器は旋律(メロディー)だけでなくいつでも多声部を弾かなければならない楽器だから読譜が難しいのです。丁度オーケストラの指揮者のような役割で、指揮をした上自分の指で全部それを音楽にします。(オケの指揮者より大変な仕事?)それですから、楽譜の各パートを常に正しく理解し、即、音にしなければなりません。

 他の楽器(声楽、弦楽器、管楽器)はメロディーだけですから常に伴奏者が必要です。いつも誰かと一緒というのも楽しいことですが、良い相手がみつからない時は大変です。その点、ピアノは一人ですべてやれるし又他の楽器とも一緒にアンサンブルで楽しむ事ができます。

 私はいつも「ピアノは王様の楽器」と思っています。でも王様といって喜んでばかりはいられません。王様ゆえに責任があります。その責任の大きな一つが正しい読譜です。(正しい読譜については次号で説明します)

 幼い生徒にどうやって読譜を指導したら良いか考えてみましょう。(先生だけでなくお母様方も)まず、読譜という言葉が、大人を間違った考えに誘います。読譜、即ち楽譜を読むのだから目で楽譜を見て、それをピアノの鍵盤の上にある手で音にしながら弾き続けることなのだと考えます。そして、すぐそれを子供達にやらせようとします。でもそれは不可能な事です。私は、教材のBook 2に入った時から年令が何才であろうと(例えば3才でも)読譜の勉強を始めます。

 読譜といってもすぐに読ませる訳ではありません。そして読譜用に教材とは別の本を使います。レコードはありません。まず私はお母さん方に話します。赤ん坊が2〜3才になった時、自由自在に喋れる子供のために母親は必ず何か本を買ってきます。そしてそれは字を教えるためではなく“本”ってものがあるということを教えるためです。必ず親が読んで聞かせています。そんな事を何回も繰り返してから、子供達は少しずつ字を覚えてゆくのです。音楽の読譜も同じです。始めは決して読ませてはいけません。無理に読ませると子供はそれが大嫌いになります。

 「これは読譜の勉強の始まりですが、決して読ませようとしてはいけません。全部教えてしまって下さい。そして覚えて弾けるようにして下さい。ただいつも読譜の勉強をやりましょうと言って、ピアノの前の譜面台に本を置いて下さい。そして、今日は1番とか7番とかそれくらい指さして子供達が見るようにして下さい」と私はいつもお母さん達に言っています。勿論生徒が10才以上でしたら、始めから少しずつ自分で読む事が出来るでしょう。始めに書いたようにピアノという楽器にとって読譜はとても大切な仕事です。初歩の時から将来本当に正しい読譜が出来る人になれるよう基本をしっかり教えるべきです。

 次号にこの続きを書きたいと考えています。【K】(1992.10.22.掲載)



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