厳しさ!

投稿日時 2010-4-30 20:31:38 | トピック: コラム


 お父さんへ‥‥住む所があって、食べさせてもらって、ピアノを習わせてもらっているだけで充分幸せです。(小5男)

 これは3月のこのピアノ科のニュースレターに載った「子どもの言い分」の中にあった一小学生の文章です。私は最初に原稿を見た時にとても驚きました。

 常日頃、今の子ども達は衣食住すべて恵まれ過ぎていて何も心や頭で考えない! と思っていたからです。 こんな素晴しい子どもをもったお父さんてすごく幸せな人! どこの誰だろうと調べてみました。
 そのM君のお父さんは、10年前運の悪い事故のために橋から落ちて首の骨を折り、車椅子の生活になられた方でした。K家は両親、男の子二人の四人家族です。 弟のN君がお母さんのお腹にいる時、不幸な事故が起こったのです。

 それでも気丈な御夫妻で、以前から経営していた会社を二人で続けられています。 お母さんは会社の仕事とお父さんの世話に追われ忙しいので、M君は小学校二年生の頃から食事を作ったり掃除など家の手伝いをしているそうです。 お父さんは手がコンピューターのキーを少し押せるぐらいで、手足はまったく使えない上に、身体は麻痺していて動けない状態です。

  これだけ話を聞いて私は涙が流れました。 この親にしてこの子です! それにお母さんの素晴しさです! 誰かがこのお母さんの実家のお父さんから聞いたことですが「この10年間我が娘ながら感心です。一度も『グチ』をこぼさないで頑張っています」との事。

 みんな日本中少したるんでしまったかな? という今、こんなすごい家族が松本にいるのです!!

 鈴木先生が『人は環境の子なり』と言われ、親が良い環境を作ってやりなさいとよく言われました。 そうなんです。 人間は生まれてから育つ段階に、どんな環境にいたかが問題です。 そこで良いもの悪いものすべてを受け取り人間形成がなされます。

 良い環境というと、つい楽でたのしいものだと勘違いします。 それですっかり子供を甘やかし、スポイルして弱い人間にしてしまうのです。 人にはいつも『厳しさ』が必要です。 厳しい中で困って苦しんで、初めてものを考えられるようになります。

 近ごろの若者は、ものを考えない浅はかな行動しかできないと大人は責めますが、よく考えてみれば彼等はなまぬるいお湯につかったような状態で育てられ、考える習慣をつけてもらえなかった不幸を持っているのです。

 子どもにとってまず自分の家庭の中がミニ社会です。 M君は厳しい条件の中で生きている両親と共に生活して、その中でこれだけの事が書ける子どもに成長しているのです。 この先、人の心が分かるたくましい青年に育つことは間違いないでしょう。 その上嬉しいことに、車椅子のお父さんは仕事で会社に来る誰にでも、いつも「ニコニコ」と笑顔で接してくれるそうです。 K家の皆さん頑張って下さい!

 さあ皆さん、子ども達には心を鬼にしても少し厳しくしましょう。 子どもが厳しさを覚えるのは、体を使ってやるものからやらなければいけないのです。 家のお手伝い、ピアノの練習、さしあたって目の前にあるものから始めましょう!  【K】  (1997.4.1.掲載)





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