心と心

投稿日時 2011-7-24 1:16:04 | トピック: コラム



「物やお金が豊かになると心が貧しくなる」反対に「物やお金が無いと心が豊かになる」と昔から言われています。

そうだとすると日本にとって今はとっても『危険』な時です。 20世紀半ばからありとあらゆる物が豊富になり、それに従いお金が沢山手に入るようになりました。当然心は貧しくなっています。

 それでも松本で昨年の11月に『10台のコンサート』があった時、とても心温まる良い話がありました。それは、アメリカのケンタッキー州のルイビルから『10台のコンサート』に参加するため、両親と一緒に松本へやってきた5才の男の子ジョナサンです。彼は生まれてすぐ小児麻痺にかかり運動神経が正常でなくなって、5才なのに歩行器を使わないと立つ事も歩く事も出来ません。

ただ嬉しいことにとても具合の悪かった体が、ピアノのレッスンを始めてキラキラ星が弾けるようになったら病院のお医者さんが驚く程、体が回復してきました。そのため両親はピアノの練習に熱心で、日本までこのコンサートのために連れて来たのです。そしてジョナサンはお父さんとお母さんと3人でOさん宅にホームステイしました。

 Oさんの家には4才のK君がいます。二週間ジョナサンが泊まった間、二人は仲良く遊びました。4才のK君は優しく良い子なので二人はとてもうまく付き合えたようです。話すのに使う言葉はK君は日本語、ジョナサンは英語。それでも何の支障もなく話は通じたようです。

 子どもは言葉なんて問題ではないんですね。彼等は心と心で話し合っていたのです。アメリカ人のジョナサンは言葉の表現力があり「この家は日本中で一番素晴らしい家!」「K君はエンジェルだ!」と言いました。きっと体が不自由なので他の子どもにいじめられる事もあるのでしょう。

コンサートが済んでアメリカに帰る朝、ジョナサンは泣いて「帰らない! 僕はここにいる」とお母さんを困らせたようです。K君のお母さんも二週間お世話をしてジョナサンと心が通じていたのでしょう。泣いて別れたようです。

 もう一人アメリカの5才の子どもがホームステイした家、IさんはY君(3才)とT君(5才)の兄弟がいます。タイラー君(5才)は背は大きいけれど一寸スポイルされていて弱い子。しかし頭は良く、ケンカしても勝てそうもないT君には手を出さずもっぱらY君をつついていたようです。

二週間が過ぎて彼等が帰ってしまった後、いつもいじめられていた3才のY君が「これタイラーの分。とっておいてあげなくちゃ」とお母さんに言うそうです。表面はケンカしても二週間も一緒にいると、どこかで心が通じてY君はタイラーの事を思いやっているのです。人間の心って素晴らしいと思いませんか!

 もう一つ偶然に新聞で読んだ文で心打たれた事があります。それは私の大好きなサン=テグジュペリ(フランス人飛行家・作家)のことでした。皆さんもご存知の『星の王子様』を書いた人です。1944年第二次世界大戦の終わる少し前にフランス軍の航空将校であった彼は、偵察飛行に出たまま行方不明になりました。その知らせが敵・味方両方に伝わった時、ドイツの戦闘機がみな翼を振って弔意を表したということです。

サン=テグジュペリはフランス人で何よりも飛行する事を愛した人、そして空を飛ぶ事で得た数々の喜びと苦労の経験から書かれた文学作品とその人間性は、世界中の人に愛されていたのです。それで敵であったドイツの飛行士達が亡くなった事に心を痛めてお悔やみを言うって何て素晴らしい事だろう、と感動しました。

 人間一人一人の心はとても素晴らしいのに、どこでどうなって戦争等をするのでしょう! 人間にとって一番大切なものは心、一人一人の心と心が通じ合うことがお金や物でなく一番大切なのだということに気が付き、心を大切にする世の中になってほしいと願っています。     【K】(1998.1.1.掲載)




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