ピアノ科の4人の生徒達(荻原クラス・藤原クラス・片岡クラス)のアメリカ旅行先は、ジョージア州のアトランタ市とカリフォルニア州のサクラメント市でした。
ここで行われる熱心なスズキピアノの先生方のワークショップの中で、フレンドシップコンサートをやってほしいとの希望で呼ばれたのです。それですから、日本の先生の立場としては、良く勉強する生徒を連れて行って、日本の子供はこんなに素晴らしいんですよ! と自慢したいところです。
それでも、諸般の事情を考えるとこちらで選ぶわけにはいきません。小さい子供でしたら、母親も一緒に行ってもらわなければならないし、飛行機の切符の代金は、かなりの金額です。それを、自己負担していただかなければならなかったので、「行かれる人は、誰でもいいです」と言うことで、この4人の子供は決まり、出掛けた次第です。
ワークショップに方々から(ヨーロッパからも)集まったピアノの先生方は、50人以上でした。始まる日にまずアトランタ市の先生方の生徒達百人ほどで、5台のピアノコンサートがありました。なかなか皆さん上手に弾きました。子供達が正しく良く育つ事は嬉しい事です。
そして次の日の夕方5時から、フレンドシップコンサートのリハーサルがありました。私がいつも言う、大切な基本を正しく教えてもらっている生徒がアメリカでも大分育ってきて、コンサートのプログラムの最後は、ショパンのスケルツォの3番です。その他も大分、上級生がいます。
日本の生徒達も4才の清加ちゃん、5才のひろ君はさておき、あとの二人はアメリカの子供達が上手なのを聴いて“やる気”を起こしたようです。中学生になってから、良い練習をしなくなったしおりちゃん! 「一日12時間練習していましたけど、日本の子はあんなにやるのですか?」とその家の先生に、私は質問されてしまいました。
3才から始めて今6年生。多分毎日練習する習慣のついていなかった敬介君も誰にも言われないのに、毎日本当に良く練習したようです。そして二人とも、考えられないほど上手に弾きました。二人にとって本当に良い経験だったと思います。自分から決めてやれば出来るのだ! そして出来た時の喜びを味わえるのだ!
丁度これを書いている時、テレビのニュースで北海道から、九州の鹿児島まで、一人で自転車をこぎ続け、35日間かかって旅行した小学校6年生の男の子が映っていました。真っ黒に日焼けしてたくましく、そしてちょっと疲れた顔で「この旅行で何を感じましたか?」との質問に、「やれば出来ると思いました」と答えていました。同じです。やれば出来るんです!
人間は素晴らしい! “どの子にも、どんな事情を背負った子にも可能性がある。即ち、どの子も素晴らしい”という証拠を示してくれた旅行でした。
私達はいつも子供達に教えられます! 【K】(1992.8.28.掲載)