才能教育研究会ピアノ科




コラム : 我に七難八苦を!
投稿者: river 投稿日時: 2005-9-28 2:27:59 (867 ヒット)


 永禄五年(1562年)以降、尼子の軍勢は毛利との戦いで苦戦をしていた。その尼子十勇士の一人の武将 山中鹿介は、ひとり三日月に向かって祈った。「我に七難八苦を与えたまえ」と。

 中学生だった私は、国語の教科書の中でこの文章を読み、驚いたのを覚えています。「なぜ?」「どうして?」「誰だって神様に祈る時は、良い事がありますように、と幸運を与えられるよう祈るのが当たり前なのに・・・?」この文章はその時の私の心にとても不思議に感じられたせいか、何十年たった今でも忘れられないものなのです。

山中鹿介の一生は、祈った通りに苦難の連続で天正六年(1578)毛利氏に城を攻められ籠城したが敗北し、主君の尼子勝久は自刃。鹿介も捕らえられ殺害されています。
 人間は弱い人ばかりではなく、本当にすばらしい精神力を持った人がいるのですね。

 もう一つ別なことですが何げなく見たテレビの番組で「アメイジング・グレイス」の話を聞きました。この歌はアメリカでずっと歌いつがれ、その昔差別に苦しんだ黒人、また今でもいろいろな苦労に打ちひしがれた人々に歌い続けられ、「この歌によって私はすくわれた」と言う人が一杯いる素晴らしい歌です。

 その番組の中で、ある監獄に収容されている終身刑の人々にインタビューをしていました。なぜかと言うと、その監獄には男性のコーラスがあってその人達はそのメンバーだからです。彼等は口々に「アメイジング・グレイスという歌に出会って私は救われた。なぜか分からないがこの曲を歌うと涙が流れ魂が救われるのだ。私は殺人を始めありとあらゆる悪い事をしてきた。死ぬまでかかってもそれを償う事は出来ないかも知れないけれど、この歌を知って私の心は安らぐ事が出来た」と言います。

 そしてチャペルの中で、牧師さんの指揮でこの歌を歌っているコーラスの人達の顔の何と素晴らしいことか! とても悪い事をした人の顔ではなく、愛情に満ち悟りをひらいたおだやかな人の顔です。私は思わず感動してしまいました。


 もう一つ、やはりテレビで見た南アフリカ共和国のアパルトヘイトに反抗する黒人の舞踊団(サラフイナ)の人の踊りの素晴らしさです。とても普通ではない沸き上がるエネルギー!! 人間って苦しまなければ、本当の魂の叫びが出てこないのではないだろうか! 

 私達は今現在、本当にめぐまれた社会の中で、なまぬるいお湯につかったような生活をしていて一体これで良いのでしょうか。親は自分の子供可愛いさと、今の社会の何でも楽をしようとする動きの中で、結局子供達をスポイルして駄目にしてしまっているのではないでしょうか。この辺で、私達は真面目に自分たちの生活のやり方を考え直さなければいけないと思います。

 人間は、生まれてきて苦しいつらい修業をして初めて本当の事がわかるようになっているのです。努力、忍耐の能力を作ると初めて素晴らしい集中力が生まれ、苦しむことでエネルギーがふき出してくるのです。七難八苦とはいかなくても3.5難に4苦ぐらいは頑張ってやりましょう! 【K】(1992.9.28.掲載)

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