10台のピアノコンサートが済んで、嬉しい御手紙を頂きました。そしてそれは、巻紙に達筆の毛筆で書いて下さったものです。一部載せさせていただきます。
「 本日、ピアノ10台のコンサート聴かせて頂きました。 (中略)
さて、子供達の演奏一曲一曲じっくり聴かせて頂きました。唯々すばらしい演奏でありました。正にこの一語の他にありません。深い感動でありました。それぞれ10人の子供達の演奏が一糸乱れず、しかも強弱は申すに及ばず微妙なテンポ変化、細部に至る曲想表現等、実に見事でありました。本当に驚異であります。
とりわけ、あの大勢の子供達の中で、心をひきつけられたのは、大月裕夫君七歳の演奏ぶりでありました。全盲でありながら、どうしてあのように育ったのか、あのすごい力、唯々驚きでありました。 (中略)
10台のピアノでこれだけ質の高い演奏をしている子供達は、おっしゃっている通り世界のどこにあるでしょうか。極めて困難な事を見事にやっておいでになる・・・世界に向けての音楽教育の一大革命であると思います。」
T先生はずっと学校の音楽専科の先生でいらっしゃいました。二人の男のお子さんはそれぞれピアノ、ヴァイオリンを才能教育で勉強され、現在は二人とも大学を卒業、東京で社会人として活躍しておられます。T先生は屋代小学校・筑北中学校・今井小学校と校長を三期務められた後退職され、今は老人大学で教え、コーラスの指導もされています。
私がこのお手紙をいただいて一番嬉しいのは、長年大勢の子供達と接し、子供はどんなものか音楽は何なのかよくご存知のT先生が、10人の子供が心を一つにして弾く姿とその演奏に感動して下さった事です。
とかく音楽の専門家は大切な人の心や魂を忘れて知識偏重になり「バッハの時代のトリルはこれが正しいとか、表現法はどうだこうだ」と頭でしか音楽を受けとれなくなっています。今、私達の住んでいる社会が物やお金が一番大切になり、人々はその方にばかり目を向け人間にとって一番大切な心や魂を忘れがちになっているのと同じ事です。
即ち音楽も物やお金と同じように頭で考える知識にばかり気持ちが向いているのです。これは大きな間違いです。そんな細かい知識より、子供達のひたむきな一生懸命、心、努力、お互いに助け合おうとしている愛情を感じ取れ、感動出来る事が人間として一番大切な事ではないでしょうか。
今回の演奏は、プロフェッショナルな演奏家が弾くのとは全々違います。どうしてもやる事を間違ってしまう子や、揃わないこと等々まだまだ勉強する問題は沢山あります。
今回このようなお手紙を頂いただけでなく、あちらからもこちらからも沢山の方々から「涙がでました!感動しました!」という言葉をいただきました。人間の心と愛は人々の感性を通して感じ合うことが出来るのです。先生・研究生・保護者一同本当に嬉しく、苦労した甲斐があったと喜んでいます。
さあ、今から第8回の10台のコンサートに向けて、一生懸命、先生も生徒も勉強しましょう! 【K】(1994.12.19.掲載)