才能教育研究会ピアノ科




コラム : 育てる(障害児の教育を見て)
投稿者: river 投稿日時: 2008-7-31 23:57:49 (1228 ヒット)


 ずい分前、テレビで見て素晴らしい! と思って忘れられない話です。

 日本のどこかの障害児を教育する○○園という施設でした。そしてそれは、知恵おくれの子ども4人(多分10才ぐらい)の新入生を一人の男性の先生が1学期間、指導するところを記録したものでした。

 まず最初、先生が言われるのに4人とも過保護で今迄何でもまわりの人がやってくれたので、何も出来ません。それでまず初めは足腰の弱さを鍛えるため、畑で土を耕す作業から勉強が始まりました。

最初、子供達は1〜2回やるとイライラして道具を放り出す始末です。少しも我慢するとか耐える努力が出来ません。「集中力は15秒です」と先生が言われます。そしていやだと泣き声をあげ、先生の手に噛みついたり、頭をぶつけてきます。それを先生は根気よく指導なさいます。

 畑だけではなく棒に素足で登る練習、鉄棒の前まわり、なわとび等をやらせます。どの子もどれをやってもいやだと言って泣き叫びます。

先生は手を噛まれるとその子供の手を同じように噛んで「痛いだろう?」「いたい」「それならお前も噛むのを止めなさい」頭をぶつけてくると、すぐぶつけ返して「痛いだろう? だから止めなさい」と教えています。

そして「止めます」と口で言いなさいと命じ、言い方が悪いと何回でもやり直しでした。夜、寝る時の「おやすみなさい」もきちんと言わないと何回でも繰り返し、上手に言えるまでやり直しでした。


 毎日のマラソンも初めは駄目だったのが、次第に距離を延ばしてきました。先生が励ましながら横に付いて一緒に走っています。

 ある日一人で走った子どもが、約束の場所より手前で折り返して戻ってきました。タイムをとっている先生には、それがすぐ分かって「お前、決まった所まで行かなかったね。さあもう一度始めからやり直し!」と3キロか4キロのマラソンをやり直しさせています。

その時先生はその子に付いて、一緒に走っているのです。私は感動しました。これこそ本物の教育だ! 口で命令するだけでなく苦労をともにして先生も同じ事をやる、そうすればどんなに厳しくても子ども達はついてきます。

そしてそのマラソンをやり直した子は、完走したとき前回のタイムよりずっと速い良いタイムだったのです。先生から「お前は力があるんだ」と誉められ喜びを与えられていました。先生は「ここの教育は、子ども達が自立出来るためのものなのです」と言われます。

 子ども達を指導するのは愛情と根気と忍耐が必要で、良い事を繰り返す事、信念を持って厳しくすると、結果的に大きな喜びが得られ人は進歩するのです。

 この施設の子ども達4人も1学期の終わりには、1回か2回やるだけで泣きわめいた、なわとびも50回以上出来るようになり、少しも登れなかった棒のぼりも出来るようになりました。


私はこれを見て、障害児でも普通児でもやる事の内容は違っても、愛情・根気・忍耐を教える側が持って育てるという事はまったく違わない、同じ問題なのだと思いました。

障害児の方が何も出来ない所から出発するせいか、人間にとって一番大切な基本が何かということがよく分かって、良い教育がされています。何か出来る普通児の方が基本を忘れて「あの子は駄目だ・・・」と言うばかりで、教える側が汗水流して努力する事を忘れてしまって、悪いのは子どものせいにしているのではないでしょうか。

子どもはすべて素晴らしいのです。ただ子どもにはいつも本当の意味で厳しく育ててくれる、良い人が必要なのです。

 素晴らしい子ども達を育てる作業は本当にやりがいのある大切な仕事です。子ども達のまわりにいる人がみな良い人になりましょう。 【K】(1995.7.24.掲載)

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