何の勉強をするにしても、誰でも始める時はゼロです。それについて何も知らない、出来ない白紙の状態です。
そして世の中の常識は、初めは下手で次第に上手になると思っています。“子供は何をやっても初めはうまく出来るなんて無理ですよ! そのうち段々上手になって上級生になり、良い先生について一生懸命勉強すれば、一流になります”が普通の考え方です。ところがこの考え方が、大間違いの元なのです。
一流を目指すが三流を目指すかは、最初にそれを始める時から大切な問題なのです。例えば、ピアノの教科書 Book 1 の時からいつも一流の演奏が出来なければいけないのです。Book 2 も一流。いつも一流の勉強をしていなければ、上級生になって一流にはなれません。
そこで問題は先生です。習う親子は専門家ではありません。初めはどれが一流で、どんなレッスンが二流か判断する事が出来ません。いつの間にか上級生になって、その子がどうしても音楽を専門に勉強したい、一流の場で学びたいと思った時、ずっと三流の教育を受けていたのでは間に合いません。それを知った生徒は、本当にショックを受けてかわいそうです。「少年よ、大志を抱け」とクラーク博士は言っています。教える側はいつも一流を目指して勉強するべきだと思います。
すべての(政治・経済・音楽等々)分野を一流の勉強した人が受け持った時、素晴らしい世界が実現する気がします。人間に一流の教育を身に付けさせるには、教える側の温かい愛情と忍耐と根気が必要です。今の日本の大学の受験勉強のように、短期間でやれる仕事ではありません。
ずっと前テレビのニュースの時間に、大学の先生が、アメリカのワシントンで政治問題の討論会をやってアメリカの政治家に「日本の経済は一流かも知れないが、政治家は三流だ」と言われ、アメリカは経済は三流で政治家は一流でしょうか等々の話をしていました。そして「経済は三流を一流に立て直す事は出来るでしょうが、人間を変える事は無理でしょうね」という話になりました。
私は聞いていて思わず笑ってしまいました。大人の政治家を今から変える事は本当に不可能です。
やはり初めから一流でなければいけないのです。ただ曲を覚えて、どんどん先の曲に進む事が良い事のように思われていますが、一曲一曲キラキラ星からいつも弾く子供の現在の状態の中での最高の演奏になる迄、先生は丁寧に指導するべきです。
どうぞ保護者の皆さん、私達はそれを目標にして努力していますので、一流の勉強が出来るよう協力して下さるようお願いします。【K】(1991.11.19.掲載)