才能教育研究会ピアノ科




コラム : なぜ毎日練習するの?
投稿者: river 投稿日時: 2007-5-22 4:23:35 (1190 ヒット)


 「先生、なぜピアノの練習は毎日しなければいけないの?」「どうして同じ事を毎日毎日繰り返し練習するの?」

 私は長い年月生徒とレッスンで付き合っています。そしてそのレッスンの時、可愛い小学生の子供達がよくこの質問をします。

 一方レッスンに一緒に付き添って来ている親は「うちの子はどうしても練習が嫌いで困ります。どうしましょう?」と日本だけでなく世界中の各地でよく相談されます。

 私の答えはいつも同じで「世界中練習の好きな子は1人もいません(練習の意味はただ曲を弾くのではなく部分練習する事です)“練習が好きでたまらないっ”て子がいたら精神科の病院に行った方がいいでしょう。練習が嫌いな貴方のお子さんは大変正常(ノーマル)な子供です。子供達は音楽は大好きで、練習が嫌いなんです」と話します。

 さて「どうして毎日・・・」という子供達の質問にはこう答えます。「人間の体はね(頭ではない)1日単位になってるの。あなただって毎日食べるでしょ。それに毎日寝るでしょ。毎日は面倒でいやだから3日分1回に食べようったって食べられないのよ。寝るのも同じ、一週間分先に寝てあとの七日間ずっと起きてるなんて出来ないでしょう?呼吸だって同じ、人間の体は1日1日決まった事を繰り返しやって生きなさいって神様が決めちゃったから、それでピアノの練習も毎日やらなければいけないの。3日分休んでいるとピアノのテクニックは上手に育たないのよ。少しでもいいから毎日がいいの、わかった?」と話すと「何となく分かった。でもね・・・?」と言う顔で私の話を聞いています。

 そうです。人間の頭は聞いた事、見た事をすぐ覚えます。それもその瞬間に強く何かを感じた時は、何の繰り返しの練習をしなくても一生覚えている事が出来ます。ところが体は全然違います。頭と体の違いがあまりにも両極端に違っているので、大抵の人はそれをごっちゃにして分からなくなっています。

そして子供の頭脳は同じ事の繰り返しをしないで、のびのびさせなければいけないのに、試験の点数のために無理な繰り返しを強いて良い成長の邪魔をしています。それと反対に子供の時に体を使い繰り返し単純な練習をしなければいけないピアノを弾く事とかスポーツ等を軽視しています。


 体を上手に使うことは生きていくのにかかせない事です。歩く事、走る事、食べる事、寝る事、要するに動く事、すべてです。例えば歩く事も何かの都合で長期間足を使わなければ歩けなくなります。そういう訳で体に毎日毎日少しずつ良い弾き方を覚えてもらうため練習しなければなりません。

 子供達は知識がまだあまりないので練習する事を「いやだ、いやだ!」と言い抵抗しますが、その反面大人と違ってずっと繰り返しに耐える事ができます。子供を育てた事のある人だったら良く知っていますが、幼い子供は何か気に入った事があると、大人には考えられない程それを繰り返しやりたがります。

 子供達は、いやいやでも繰り返し繰り返し練習すると、繰り返しただけは良い事も悪い事もすべて身に付いてしまいます。それに比べ大人は知識が豊富ですから「練習は必要!さあ頑張って真面目にやるぞ!」と張り切りますが、その知識や欲が邪魔するので体が堅くなり良い事が身に付きません。(大人だって不可能と言うことはありませんが・・・)

体に関しては同じ時間をかけ同じ忍耐や努力をしても、得られるものは子供の時の方が10倍や100倍も多いと思います。体を使う事はどうしても子供の時に覚え身に付けなければなりません。大人になってから始めた人とは比べものにならない程自然と自由を持つ事が出来ます。

 子供達にピアノのお稽古をさせ毎日良い練習をするのは親にとって大変な事ですが、3歳からでも6歳からでも10年間一生懸命続けてあげる事はそのあとの一生の長い間、音楽芸術を深く楽しむ事が出来るのですからその子にとって何にもましての親からのプレゼントです。

そしてこのプレゼントはどんなにお金を積んでも、デパートに行って買う事の出来ないものです。 【K】(1994.5.19.掲載)

印刷用ページ このニュースを友達に送る

Copyright © 2004 才能教育研究会 松本支部ピアノ科 : WISS inc.