アメリカでは州によって、法律が違うので多少の差はあるようですが、子供達の通う小学校が彼等にとって良くないと両親が判断した時、家庭内で親が教育しても良いと法律で決められているのだそうです。今回だけでなく、前にも何となくこういう話は聞いた記憶がありました。その時には、あまりどういう事か分からず『変わった親もあるものだ』『子供は、学校に行きたいのではないかな』等々、ちょっと疑問を持っただけでした。
オレゴン州(カリフォルニア州の上)のポートランドという所のピアノの先生(シンシア)とゆっくり話す機会がありました。彼女もその一人で、7才の娘を家庭で教え、学校には行かせてないと話してくれました。そして、オレゴン州はアメリカの50何州かの中でも、ホームスクーリングが最も盛んな州のひとつだとのこと。定期的に集会があり、ホームスクーリングをしている親が集まって、話し合ったり、又講師から指導を受けられるシステムもあるのだそうです。
日本のように、子供が登校拒否をして親と先生が一生懸命学校に行かせようとするのとまったく反対のことです。「どうして学校へ行かせないのか?」という私の質問に対し、「学校は信用出来ない所だ。先生も信じられない。悪い友達、ドラッグ等々良くないことばかりが学校にはある。だから、自分の大切な子供を学校には入れたくない」と答えました。
日本では考えられない事ですが、どこの国でも、こんなにも親は自分の子供達の将来のことを考えているのだ! と感心してしまいました。
そして彼女は「自分の場合、とても上手くいっている。子供は、とても喜んで毎日2時間私と一緒に勉強する。そしてその後、スズキのピアノやヴァイオリンを学び、音楽を楽しみ、同じようにホームスクーリングをしている家庭の子供達と友達になり、よく遊んでいる。こうやって育てると、子供達は両親をいつも勉強を教えてくれる素晴らしい人として、尊敬して育つだろう。自分の子供を教えるために、多くの人(母親)が仕事を止めて、ホームスクーリングをしているんですよ」と言いました。そして、学校で勉強している子供達とホームスクーリングの子供達の学力を比べると、ホームスクーリングの子供達の方が高い学力をもっているそうです。
こうしてみると、アメリカの先生は悪い先生ばかりのように解釈されそうですが、中には本当に子供達を愛し、教育の仕事が好きな良い先生もおられるのです。けれど、クラスの中で暴力を使う子供が多く、先生が被害にあっているのに、反対に生徒の親から警察に訴えられたりして、仕事が続けられなくなるのだそうです。
科学が進み物質文明が高度になり過ぎてしまった今、人間にとっては物質だけでなく、あと半分の教育とか心の問題とかが大切なのです。それがかえって最低になってしまったのが20世紀かと思うと愕然としてしまいます。日本も事情の違いで表れ方は違っても、『子供の教育』という事は、大人が真剣に考えなければいけない問題なのだと、又改めてつくづく思いました。
いつも子供達のために、私達は良い努力を一生懸命せねばなりませんね!【K】(1991.7.6.掲載)