NHKのテレビだったと思います。クイズの中で食事のマナーについていろいろの話をしていました。その中で
1. なぜ日本人はフランス料理を食べる時、お皿に顔を近づけてしまうのか?
2. フランスの大使館のフランス人数人に聞いた日本人の食事のマナーで一番いやな悪いこと。それはお料理を食べる時、特にスープの時音をたてる事でした。
この2つは常日頃“なぜ?”なのだろうと考えていましたので解答はとても興味深いものでした。
〈1〉 日本には日本食の歴史があります。会席膳です。それは畳の上に置かれていますから必ずお椀、お皿、小鉢でもお料理の入った器を手に取って、顔の近くまで持ってきていただきます。日本食は原則として全部入れ物を手にとって食べるのが正式のマナーなのだそうです。
だから先祖代々私達にはその歴史があるので、食べる物と顔とが近くないと落ち着いて食べた気がしないのですね。それで日本料理と正反対の決してお皿を手で持ってはいけないフランス料理の時に、つい顔をお皿の方に近づけてしまうのです。
〈2〉さて次はスープをいただくとき音をたてる理由です。フランス人が40℃のスープを流し込むように、綺麗なマナーで口に入れた時にその口の中の温度を計りました。それは全く同じ温度で40℃でした。次に日本人が同じ40℃のスープをズルズル音をたてて飲むと口の中の温度は30℃になります。日本人は生活の知恵で熱い物を飲む時、空気を一緒に吸い込んで冷ましてしまうのです。
何と素晴らしい知恵ではありませんか。考えてみると今の日本食でもおそば・うどん・ラーメンを始めとして、食事のときあたたかい汁物を沢山食べているような気がします。それに比べ世界中の国々の食事にはあまり汁物がないのではないでしょうか。日本の気候風土が私達に合った食事を与えてくれ、それを熱いまま上手にいただく生活の知恵を身につけたのだと感心してしまいました。(ただやはり音はあまりたてない方がいいと思います)
最後にフランス料理を食べるフランス人と会席料理を食べる日本人(両方ともその道のオーソリティ)の姿勢の比較をしました。そうすると顔の近くまで器を持ってくる日本人の方が、正しい美しい姿勢を全く崩さずに食べるというのが証明されました。そしてなぜ食べる時に正しい姿勢が必要なのかというと、人間の体が正しい姿勢であるとき人体構造の自然がもっとも良く保たれ、食べた物が一番良い状態で消化されるのだそうです。マナーはそのためにあるのだという事でした。
そうです。ピアノを弾く時なぜ良い正しい姿勢で弾かなければいけないのか? 全く同じ理由です。時々まるで踊っているように腕を動かしたりおじぎをするように上体を振る人がいますが、これでは良い音は勿論良い音楽も作れるはずがありません。体の自然をもっとも良い状態にした時、もっとも能率良く体と心を使うことができます。何をするにも正しい姿勢がまず基本的に大切なことのようです。
さて子供達に正しい姿勢を教えるには、まず廻りの大人が生活の中でお手本を示さなければいけませんね。「まずピアノを弾くには」「まず生きるには」正しい姿勢が必要です!【K】(1993.3.19.掲載)