才能教育研究会ピアノ科




コラム : 一に芸術 二に学問
投稿者: river 投稿日時: 2008-10-31 2:15:29 (1033 ヒット)


 4〜5年前から、私の所へ北海道の札幌からピアノのレッスンに通って来ているアメリカ人の親子がいます。ユタ州のオグドン市に家があります。

 最初にピアノのレッスンをスズキで始めたので、彼等は仕事の都合で日本に来た時、札幌で才能教育をさがしました。ところがうまくゆかず、松本に来て私達のレッスンを見て、どうしてもここまで通うと言ってそれからずっと通って来ています。

 但しさすがに遠いので2〜3ヶ月に一度しか来られません。それなのでレッスンに来る時は2〜3日松本に滞在します。そのため二人の子供達は札幌で通っている日本の小学校を休まなければなりません。

 アメリカ人である母親の言い分は、『子供の教育で、一番大切なのは芸術の勉強、二番目が学問です』 私も確かにその通りだと思います。芸術は情緒の分野で心とか魂の問題です。私達人間にとって一番大切な事だと思います。その次に学問知識を勉強するべきです。

 ところがB家の住んでいる札幌の小学校の先生は『ピアノのレッスンに行くので3日間休みます』と届け出ると、とても機嫌が悪いそうです。そして、母親は「どうしたらいいでしょう?」と私に相談します。

 私は笑ってしまいました。「日本では今、貴女のように考える人はごく少しの人になっているのです。何が何でも学問が第一で、芸術の問題など真剣に考える人はいないのです」と話しました。


 アメリカ・カナダとオーストラリアもそうですが、真面目にやっている音楽のレッスンに出掛ける時は、学校の授業を休んで行きます。学校の先生もクラスの友達も両親も、学校の授業より難しいものの勉強に行くのだから授業を休んでも当然と思っていますから、誰も学校を休む事を非難する人はいません。日本では考えられない事です。

 日本の義務教育は世界中のどの国と比べても、とても成功していて文盲はほとんどいないようです。これは素晴らしい事だと思います。そして、願わくばそれに加えて、学校の勉強の中でもっと芸術を大切にする考え方が芽生えてくれたら最高に良い国になるのではないかと思います。

 ピアノのお稽古は良い音楽を沢山聴く事から始まります。世界最高の素晴らしい演奏家の演奏を聴く事は、その子供の一生にとって何にもかえがたい芸術の財産になります。

 そして次に待っているのは、忍耐と努力と集中力の必要な練習です。一生懸命勉強すれば、色々な曲と出会えて知らない間に芸術の世界に入れて、感性の勉強が出来ます。
 音楽のお稽古は、たとえ家庭の事情で充分な練習が出来なくても音楽に接する事で、芸術の勉強が出来るのです。

 学校の勉強の他にピアノのお稽古をさせてもらっている皆さん、本当に幸せで良かったですね。少しずつでもいいから、良い勉強をして立派な人間に育って下さい。 【K】(1995.10.19.掲載)

印刷用ページ このニュースを友達に送る

Copyright © 2004 才能教育研究会 松本支部ピアノ科 : WISS inc.