ずっと昔のことです。私は夢を持っていました。もしも自分が母親になったら子供達にピアノやヴァイオリンを習わせよう。上手になった子供達の演奏を聴けたらどんなに幸せだろうか、山登りもスキーも教えよう、一緒に休日を楽しめたら素敵。学校の勉強だっていやにならずにしっかり勉強してゆく子供に育てよう等々いっぱいありました。
ところが実際に子供を持ってみると、現実は厳しく夢とはなかなか一緒になりませんでした。私の仕事が忙しすぎたためずい分努力したのですが、どれ一つとっても、彼等のために充分時間を作って教えてやる事が出来ませんでした。
その厳しい現実の中で私は考えました。人間が人間の社会の中で生きてゆくとき、何が大切な事だろうか?
まず礼儀が守れることだと思いました。挨拶がきちんと出来ることです。「おはようございます」「おやすみなさい」「こんにちは」「さようなら」等々。親切にしていただいた時、何か物を戴いた時の「ありがとうございます」悪い事をした時すぐに「ごめんなさい」「すみません」と言える事です。礼儀は人間社会にとってとても大切なものです。性格の違った人々が集まって暮らしているのです。心なく銘々が好き勝手な事を言っていては世の中うまくいかないでしょう。礼儀がある事によって、人は相手を認め、尊重する事ができます。礼儀は人と人とのクッションになって世の中がうまく動くようになっているのです。
もう一つ、いつも私の口癖だったのが「自分さえよければいいと思っている人は人間のくずよ」「何か戴いた時はまわりの人に分けなさい」「学校の勉強が出来ても偉いことはないの。出来なくても、心のやさしい思いやりのある人になってちょうだい」でした。