ピアノという楽器は、誰がさわっても音の出る楽器です。いいえ、人でなくても鍵盤の上に物を落としてもピアノは音を出します。又、猫が歩いても音が出ます。それですから他の楽器(弦楽器・管楽器・声楽など)を弾く人は「ピアノは楽ですね。音が簡単にすぐ出るんですから。私達の楽器は音を出すために、いろいろの手続きや努力が必要ですし、音程も自分で作らなければなりません。それに比べるとピアノはやさしいですね!」と言います。
ところがそれが大違いですべての間違いの元なのです。世の中のほとんどの人は音楽家のプロではありませんので、ピアノから発する音は即ち音楽の音だと勘違いをしています。ピアノという立派な楽器から出る音は、音楽なのだと信じて疑っていません。
一般の人が分からないのは仕方のない事ですが、ピアノの先生と名の付く人が世間の人達が分からないのを良い事にして、いつの間にか『音楽の音』という大切な問題をないがしろにしています。先生は、ただの音(ノイズ)でなく、音楽の音を教えなければいけません。生徒はレッスンに来て、先生から音楽にとって一番大切な良い音を、教えてもらうのがレッスンです。勿論その他の曲についての専門的なアドバイスも教わらなければいけませんが、何よりも大切なのは、音楽の基本で音楽の音です。
なぜかと言うと、音楽で一番大切なことは、その音に歌に心や魂がこもっていなければいけないからです。
悪い音(ノイズ)は、堅い指で、たたいた時、ぶつかった時に出る衝突音です。こう言うと、大きないやな音がまず頭に浮かびます。勿論、大きなノイズはとてもいやなものです。そして、次には皆さんが気が付きにくい、小さいノイズ(悪い音)です。これは、指だけでさわった音で浮いた音です。浮いた音は、大きい騒々しいノイズと同じで拍子もリズムもとれません。ただ曲を覚えて、この浮いた音とその他の、たたいたりぶつかったりのひどい音でピアノの曲を弾いて、それが演奏だと間違えている人が世の中にはたくさんいます。