才能教育研究会ピアノ科




投稿者: river 投稿日時: 2008-11-29 2:18:05 (929 ヒット)


 近頃の若い人達は何をする時でも驚くほど何も考えていないような気がします。

 最初は考えないなんて、怠け者で許せない! と思いました。そしてどうしてそんなにものを考えないの! と言って怒りました。
 「一つの仕事をしたら、それが次にどうなるかって考えてみなければいけないのよ」と言ってみました。でも彼等はなかなか考えられないのです。

 腹が立って怒っているうちに気が付きました。今の若い人達は、考えなくても生きていられる環境の中で幼い時から育ってしまっているのです。分かりやすく言えば、考えないでも食べて、着て、寝て、学校のテストや宿題を適当にやれば、何事もなく無事に毎日が過ごせてしまうのです。そして『まことに幸せ?』な状態の中に置かれているのです。

 考えない! と言って怒る方が無理を言っているのです。だって彼等は育つ過程で考える練習を何もさせてもらっていないのですから、考えなさいと言われても出来ないのです。怒る方が悪いのです。

 でもこれからの世の中の行く先を思うと、だまって眺めているわけにはいきません。大分前ですが、朝日新聞の天声人語覧にこんな事が載っていました。それは今アメリカンドリームを手に入れた野球の野茂投手のことでした。

 ――― 社会人野球時代、先輩に「野球は考えてやれ」と言われたそうだ。「しかし、何を考えたらいいのか、わからない。だからまず、ふだんの生活でいろいろ考えてみることにした。たとえば、仲間と飲んだとき、ああこいつはこんなことを思って話しているんだな、と考えるんです」
 「またこういう考え方もしてみた。これをしたら次にこれをする、でも、もしそうならなかったら、自分はどうするのか、と。そんなふうに、野球以外のことから、だんだん野球のことも考えていった。そうしたら、力でねじ伏せてやろうというピッチングが、そうじゃなくなってきた」彼の哲学は、足が地に着いている ――― 

 ピアノで、一つの曲を作曲者の願っている通りに演奏するには楽譜を見て随分考えなければなりません。高校生以上の人は感性で感じるだけでなく、頭でも考えることが必要です。ところが前に書いたように、毎日の生活の中で物を考えるよう習慣づけられていないので、困ったことにピアノを弾く時も、何も考えないのです。

 野茂選手のように生活の中で考える練習をして、初めてそれを仕事の上で役立てる事ができます。ピアノの演奏もまったく同じです。

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投稿者: river 投稿日時: 2008-10-31 2:15:29 (1033 ヒット)


 4〜5年前から、私の所へ北海道の札幌からピアノのレッスンに通って来ているアメリカ人の親子がいます。ユタ州のオグドン市に家があります。

 最初にピアノのレッスンをスズキで始めたので、彼等は仕事の都合で日本に来た時、札幌で才能教育をさがしました。ところがうまくゆかず、松本に来て私達のレッスンを見て、どうしてもここまで通うと言ってそれからずっと通って来ています。

 但しさすがに遠いので2〜3ヶ月に一度しか来られません。それなのでレッスンに来る時は2〜3日松本に滞在します。そのため二人の子供達は札幌で通っている日本の小学校を休まなければなりません。

 アメリカ人である母親の言い分は、『子供の教育で、一番大切なのは芸術の勉強、二番目が学問です』 私も確かにその通りだと思います。芸術は情緒の分野で心とか魂の問題です。私達人間にとって一番大切な事だと思います。その次に学問知識を勉強するべきです。

 ところがB家の住んでいる札幌の小学校の先生は『ピアノのレッスンに行くので3日間休みます』と届け出ると、とても機嫌が悪いそうです。そして、母親は「どうしたらいいでしょう?」と私に相談します。

 私は笑ってしまいました。「日本では今、貴女のように考える人はごく少しの人になっているのです。何が何でも学問が第一で、芸術の問題など真剣に考える人はいないのです」と話しました。

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投稿者: river 投稿日時: 2008-9-27 4:30:43 (1193 ヒット)


 我が家の子ども達二人が幼かった頃、心配性の私はよく考えました。それは『もし私が病気や事故等で突然死んでしまったら、子ども達はどうなるのだろう』という事でした。

そして、それを考えると心は心配で一杯になります。大学を卒業するまでの費用やお金にかえられる物を残せば・・・と一瞬考えましたが、お金や物は何か事が起こると無くなってしまうという事を、いやという程思い知らされている私(1945年の終戦)にとって『それは無駄』とすぐ分かります。

 そうなると、どんなに困った事が起こってもそれに対応して生きてゆける強い人間を作るよう心掛ける他に方法はないと思いました。

 思えば昔の明治生まれの親達は、生活する上での行儀・作法・礼儀等々、非常に厳しかったように思います。そして子ども達は辛い思いをして、一人前の人間に人間形成されるのです。親にとって子どもは可愛いので可愛がってしまう方が楽なのですが、子どもは厳しく躾けなければいけません。 それが本物の親の愛情です。いつ一人になっても強く生きて行けるように厳しく厳しく育てるべきです。親ってなかなかつらい厳しい仕事なのです。

 ある日、東京から毎週松本までレッスンに通っているMさんが面白い話をして下さいました。「動物学者が書いた本を読んだら野良猫と飼い猫の脳の違いが書いてあって飼い猫の脳を1とすると野良猫の脳は10倍大きい」とのこと。脳は大きい程利口だと言われています。どうして飼い猫と野良猫がそんなに違ってしまうのでしょう。

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投稿者: river 投稿日時: 2008-9-4 0:24:12 (929 ヒット)



 「うちの子は、親の言う事は何も聞かないんです。何を言っても駄目、もうあきらめました」とお母さん方がよく言います。「いや! あきらめないで! どうかあきらめないで下さい」と私は答えます。

 私が長年生きて、観察したところによると、どうやら人間は子どもの時に、好むと好まざるに関わらずまわりの人々から口うるさく言われた事、即ち見たこと聞いたこと全部身についてしまって、それにしばられて生きなければならないような仕組みになっています。

 例えば、私のように昭和2年頃生まれ育った人は、小学校の時によく先生方のお話に「お米は一粒でも粗末に扱ってはいけません。御飯粒一つに農家の人が一年間、汗を流して心を込め苦労して作った思いがこもっているのです。一粒といえども大切にしましょう」と毎日のように言われました。家の中でも同じことで、「食べる物を粗末にしてはいけません」と言われ続けました。そしてその度に「又、同じ話」とうんざりしていました。

あれから60年近く過ぎて、何でも食料の豊富にある時代になりましたが、私は今もって『お米一粒』の話を忘れる事が出来ず、食事のとき御飯は一粒も残さないようにと気を使ってしまいます。時々、同年代の方と話をすると同じ思いを持っておられるようです。そして私はこの例一つをとっても、子どもの時に身に付いたものは『その人を一生支配するのだ!』って思います。


 もう一つやはり私の家の事ですが、母は礼儀・作法・その他何でも厳しかったので、箸の上げ下ろしに小言を言いました。私はいわゆる『良い子』で母の言う事をよく聞き、実行しようと努力しました。

ところが私の姉は私と性格が正反対で、何でものびのびと自由に自分の思った通りに行動し、母の言う事など馬耳東風で全然聞いていません。それですから毎日々々、朝から晩まで叱られ通しでした。どんなに母がきつく叱っても、姉はその部屋を出れば歌を唄っているようなのん気な人でした。

 ところがその姉が結婚して3人の男の子の母親になりました。ある時、姉の家へ遊びに行くと、姉が小学生の子供3人に小言を言っています。驚いた事に声の調子・小言のセリフが母とそっくりなのです。昔、姉が子供の時に母から言われてちっとも聞いていないと思ったのに、どうしてそんなにそっくり覚えてるの!とびっくりしてしまいました。その頃は私も教育の勉強をしていませんでしたので、『どうして? なぜ?』と、ただ不思議でした。

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投稿者: river 投稿日時: 2008-7-31 23:57:49 (1228 ヒット)


 ずい分前、テレビで見て素晴らしい! と思って忘れられない話です。

 日本のどこかの障害児を教育する○○園という施設でした。そしてそれは、知恵おくれの子ども4人(多分10才ぐらい)の新入生を一人の男性の先生が1学期間、指導するところを記録したものでした。

 まず最初、先生が言われるのに4人とも過保護で今迄何でもまわりの人がやってくれたので、何も出来ません。それでまず初めは足腰の弱さを鍛えるため、畑で土を耕す作業から勉強が始まりました。

最初、子供達は1〜2回やるとイライラして道具を放り出す始末です。少しも我慢するとか耐える努力が出来ません。「集中力は15秒です」と先生が言われます。そしていやだと泣き声をあげ、先生の手に噛みついたり、頭をぶつけてきます。それを先生は根気よく指導なさいます。

 畑だけではなく棒に素足で登る練習、鉄棒の前まわり、なわとび等をやらせます。どの子もどれをやってもいやだと言って泣き叫びます。

先生は手を噛まれるとその子供の手を同じように噛んで「痛いだろう?」「いたい」「それならお前も噛むのを止めなさい」頭をぶつけてくると、すぐぶつけ返して「痛いだろう? だから止めなさい」と教えています。

そして「止めます」と口で言いなさいと命じ、言い方が悪いと何回でもやり直しでした。夜、寝る時の「おやすみなさい」もきちんと言わないと何回でも繰り返し、上手に言えるまでやり直しでした。

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