『あの子は体が堅くて駄目なのよ』『だから上手く弾けない』これは、ピアノの先生がよく言ってしまうセリフです。
幼い子がピアノのお稽古でキラキラ星のリズムを弾き始める時、子ども達はその体に一人一人異なった反応を示します。緊張のあまり体をカチカチにしてしまう子、一生懸命で堅くなる子、消極的ではっきり動けない子、皆それぞれ千差万別です。
例えると、堅くなった子は結果的にピアノを叩く事になり、ひどく汚い大きな音で弾いてしまいます。そんな時「小さい音で弾きましょう。聴いてごらん、こんなふうよ」と先生が静かなきれいな音で弾いてみせると無駄な力が抜け、子どもの体は自然体になります。
初歩の時は大きな音を要求しない事が体を堅くしないですむ大切なポイントです。そして先生が毎レッスン必ず良いお手本を口で説明するのではなく弾いてみせる事がとても重要な事です。こうすると子ども達は、生まれながらに持っている自然を壊されないで、ピアノのレッスンのスタートを切る事ができます。
子供の時代は、知識が発達していないので感性ですべてを受け取る時ですから、まわりにある物が良いか悪いか自分で判断する事が出来ずに、吸い取り紙のように見たもの聞いたものをすべて吸収してしまいます。それですから先生の弾くお手本はとても大切なのです。
人間は生きている限り、いつも体が堅い人など絶対にいません。人間本来天から授かった自然を持って生まれていますから、誰でも本来の自然体は持っています。外から何かの刺激があったために堅くなった時に、まわりの大人が生まれながらの自然に戻れるよう指導してあげなければいけません。