3才の時からピアノを才能教育松本音楽院(松本支部)で勉強して現在長野県の高校の国語の先生になっているA先生から手紙がきました。10月1日の夜、野島 稔さんのコンサートを聴いた感動を書いて送って来てくれた嬉しい手紙です。
『先日は野島 稔さんのコンサートによんでいただいてありがとうございました。6月の誠ちゃん(東 誠三)の時もそうでしたが、本当に幸福な時間を持つことができました。
毎日毎日、砂漠に水を撒くような仕事をしていて、自分はいったい何をしているのかと思う時もありますが、1日は松本へ行って素敵なピアノを聴き、ほんの僅かの時間でしたが先生にお会いすることもできて、大袈裟に言うと生き返ったような心持ちでした。演奏は後半の第二集の方がよかったように思いますが、どうだったのでしょうか。ともあれ、久し振りに本物のピアノの演奏を聴くことができたように思います。 −後略− 』
私はあなたと3才から高校3年までピアノの勉強を通して15年も付き合いましたから、あなたの性格はよく知っています。もの静かで落ち着いていて、何があっても決してあわてるなんて、はしたない事はしないけれどボソボソっと何か一言いうと、それがとても人を楽しませる温かいユーモアがあり、本当に良い人柄です。
あなたが高校3年になった時お母さんが私に話してくれた話、今でも楽しくて忘れられません。それは「大学受験を前にしてピアノと絵を書く事(上手でしたね)と勉強、お前には3つは無理だから、どれかひとつ止めたら?」と言ったら即座に「それなら僕、勉強止めるわ」って言ったそうですね。本当に楽しいユーモアのある話で、お母さんと一緒におなかをかかえて笑ったのを覚えています。
でもあなたは、親に対しても心やさしい人で、大学3年の時2才年下の妹さんが大学に受かってからは親からの送金には手をつけず、アルバイトで頑張ったという話も知っています。そしてピアノもとても上手に弾けるし、それにもまして嬉しいのは音楽が本当に好きな人になりましたね。
この文章の題に使わさせてもらったあなたの手紙の中の、「砂漠に水を撒くような仕事」というところで私は何とも説明しがたいのですが、一人で大笑いをしてしまいました。そしてとても嬉しくなってしまったのです。ちっとも授業を真面目に聞いていない生徒を前にして、あなたが一生懸命、ほんとに一生懸命、心を込めて教えようとしている姿が目に浮かんだからです。