才能教育研究会ピアノ科




投稿者: river 投稿日時: 2009-10-1 3:54:01 (1176 ヒット)


 昭和30年に東京から松本へ移って来て、初めの一年間毎日鈴木鎮一先生のヴァイオリンのレッスンを見学しました。ヴァイオリンの生徒達を見ていると、幼い子でも上級生でもヴァイオリンを弾く時に決して楽譜を見ません。それは私にとって、とても不思議な事でした。


 私は6才でピアノを習い始め、レッスンの時はいつでもピアノの譜面台に楽譜を置き、先生は「楽譜を見ながら弾きなさい」と言いました。そして何回かのレッスンの後、「この曲は一通り弾けるようになったから、次のレッスンまでに暗譜していらっしゃい」と覚えることを宿題に出され「さあ、覚えなければ!」と一生懸命暗譜した事を覚えています。

 6才からずっとこのやり方で勉強したので、ほとんどレッスンの時は楽譜を見て弾いていました。楽譜を見ないで弾けるヴァイオリンってやさしいのかな? 楽譜なしで沢山レコードを聴かせて幼い子にどうやって教えるのかな? ・・・と いろいろ疑問でした。

 そしてピアノも『同じように出来るだろうか?』と考え始めました。ピアノは両手を使っているし単旋律ではないから無理ではないかな?・・・等々と思いながらもやってみました。今は当たり前の事ですが、最初はとても楽譜なしで弾くなんて信じられない事でした。

 少しずつでしたが弾き始める前に沢山その曲を聴いて、一つずつ音で覚えてもらうと、どうでしょう! 楽譜を見ながら弾くよりずっとずっと楽に子ども達はその曲を弾きます。一巻の曲でも、Mozartのソナタでもそれが出来るではありませんか! そして、その上とても音楽的に弾けるのです。

 私にとっては「耳で音を聴いて、それを再現する」方法は考えられない事でした。「目で楽譜を見て、それを音にする」という作業をずっとずっと初めからやらされていたからです。

 初めにピアノを習う時、耳で音を聴いてそれを再現する方法で勉強した子ども達には『暗譜』という仕事がありません。曲を始めから終わりまで弾ける時にはもう覚えているのですから・・・

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投稿者: river 投稿日時: 2009-8-30 3:31:07 (994 ヒット)


 7月25日の朝日新聞の一面を見ると、[柔道・恵本「金」一号]とありました。

人ごとみたいで申し訳ないのですが、オリンピック関係の人達(選手・報道・その他)あんなに一生懸命やっているのに、金メダルひとつも無いなんて事になったらどうするんだろう? 等々と思っていたので、これで良かった! 無いというのと、ひとつでも有るというのは大きな違いだからもう心配しないでスポーツを楽しめばいい、と思いながらよく見ると金一号の横に『私は強くないので重圧なかった』と大きく書いてあります。一瞬『ほんと?』と思い、次の一瞬この人は他の人を思いやれる優しい人なんだなと思いました。

 それで興味が起こり、21面のアトランタ五輪の記事「柔道は私の青春そのもの」を読みました。

 彼女は北海道旭川の出身で柔道を高校から始め、学校から家に帰ると試験勉強はせず、柔道のビデオを夜の12時まで見ていたそうです。卒業後は住友海上火災に入社し、柔道部の二期生になり良いコーチに恵まれ五輪出場になったのです。

「オリンピックは魔物ではなく、すごい神様がいた」
「初戦のことしか考えていなかった。優勝なんて夢みたい。信じられない」
「今年の正月、書き初めをしたとき『無心』と書いた。その言葉の通り無心で臨んだ」

もっといろいろ書いてある長い記事でしたが、私は読んでいるうちに感動しました。無心になれる! それは素晴らしい瞬間なのです。

 簡単に『無心』と言いますが、無心になるのはとてもとても難しい事です。どうしてかというと、人間は大人になると知識が豊富になり頭でよく考えるようになり、欲が出てきます。もっと良くなろうとか、負けないよう頑張ろうとか、あそこをこうしよう、あゝしようでつい一生懸命になり過ぎると、欲の塊になり体に力が入ってしまいます。

 体に余分な力が入ると、体は堅く緊張して自分の思うように動けなくなります。それでもそのまま無理に動かしていると、ピアニストの場合腱鞘炎になって腕の筋肉、筋が痛くなってしまいます。スポーツでも同じ事でしょう。

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投稿者: river 投稿日時: 2009-8-1 1:42:11 (903 ヒット)


 音楽を勉強したいと思ったら、まず最初に必要なのは音楽を聴くことです。

 例えば、ピアノで何か一つの曲を弾きたいと思ったら、賢い方法はピアノの前に座って楽譜を眺めないで、まず朝から晩までその曲をCDなりレコードで聴いて下さい。一日でも二日でも一ヶ月でも半年でも聴き続けてからピアノの前で楽譜を眺めて弾いてごらんなさい。驚くほど簡単に覚えて弾く事が出来ます。


 勿論、ピアノを弾くテクニックを何も持っていない人が、いきなり難しいショパンとかリストを完全に弾くことは無理でしょう。でも沢山聴いていればその中の美しいメロディーを単旋律で弾くことは不可能ではありません。

 でも『聴く』というのはひと仕事ですね。自分の要求でこれを聴こうと集中して聴いたり、リラックスしたりで聴く時は問題ないのですが、一日中、同じ曲が聞こえていたら時にはいやになったり、うるさかったりする事もあるでしょう。

 私にもそんな経験があります。ではどうしてうるさくなるのでしょう。それは、聴くからなのです。いくらCDが鳴っていても聴かなければ、ちっともうるさくないし、飽きる事もありません。『聴く』って簡単に言いますが、聴き方にもいろいろあるのです。

 何かの雑誌で読んだことのある中国の「荘子」の書いたものをよく味わってみて下さい。

   耳で聞かないで、心でお聞きなさい。
   いいえ心で聞かないで、気でお聞きなさい。
   耳では聞くだけで、心は認識するだけです。
   しかし気は無ですべての物はそこにあるのです。 

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投稿者: river 投稿日時: 2009-7-12 2:05:50 (858 ヒット)

 ピアノの勉強でも何か他の事でも同じですが、それを習い始めようとする時、レッスンを見学するのはとても大切なファーストステップです。

 親は「さぁ、ピアノのレッスンを始める」となると何がなんでも早速ピアノの前に座って弾き方を教えていただこうとします。でも急いではいけません。赤ん坊が母国語を覚える時の事を考えてみて下さい。

 赤ちゃんは生まれたその日から、少なくとも一年間自分は喋らずに、周りの人達の話すのを見たり聞いたりして暮らします。それで喋り始めた時に、とても上達するのが早いのです。母国語だけではありません。すべて生活の中で行われている事は生まれた日から見学し、見よう見まねで赤ん坊はいろいろな事を覚えます。

 ピアノを習い始める幼い子どもは、レッスンの場を見る事も初めてですし、習うという事がどういう事かも分かっていません。それで最低一ヶ月は見学する事が必要でしょう。私のクラスではとても感心な親と子で六ヶ月間見学した方もいます。

 私は、習い始める子どもが三才〜四才でも、もっと大きくても、必ず第一段階として同じ年頃の子どものレッスンを見学するようにしています。そして親にもこれがいかに大切か話して納得していただいています。私は長年そうして幼い子どもを指導してきましたので、見学の大切さを充分知っていると思い込んでいました。

 ところが、その私がびっくり! する事を見せられたのです。

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投稿者: river 投稿日時: 2009-6-2 4:23:23 (888 ヒット)

 6才のお正月から何がどうなっていたのか、3人兄弟の真ん中の私は姉と一緒にピアノを習い始めました。 母がとてもクラシック音楽が好きで、レコード(昔はSP)を沢山集めていましたので習い始める前にも、きっと良い音楽を聴いていたのだと思います。そんな事で私と音楽との付き合いが始まりました。


 やっぱり私はクラシック音楽に縁があったのでしょうか、始めた時とても熱心だったようです。それと、2番目で何でも姉に負けたくない勝ち気な妹で、どうしても姉より先に進みたく、自分からとても一生懸命練習したのを覚えています。

そしてとうとう目的を達成し、のん気でゆっくりやっていた姉を追い越してしまいました。そして姉は妹に追い越されたので「やめる!」と言って、そこでピアノのお稽古をあきらめてしまいました。何事にも厳しかった母が、素直に姉がやめる事に賛成したのは今でも不思議です。

 さあ、それからは競争相手がいなくなったので練習に対しては、『バタッ』と意欲をなくし練習嫌いになりました。でもその時からが、私と音楽との付き合いが本当に始まったのだと思います。

 練習は嫌いだけど音楽は好き! いろんな弾きたい曲がいっぱいありました。先生から次の曲は「これを弾いてきなさい」と言われると嬉しくてワクワクしたのを覚えています。練習はいやいやでしたが、毎日必ずやらされたので曲が次第に出来上がってきます。そしてそれを演奏出来るようになると、弾きながらとても幸せな気分になるのです。

 中学の一年生の頃です。ベートーヴェンのソナタ・ワルトシュタインの2楽章、イントロダクションと後に続く、Allegretto(ソーソーミレソドミ)を練習していた時の事をよく想い出します。冬の寒い夜でしたが、あの美しいメロディーを弾きながら聴いていると、もう今の現世とは違う別世界に入って何ともいえない幸せな感じがするのです。その頃から音楽って何だろうと考え始めました。

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